Vol. 9: 日本語の維持

November 1, 2010

インターネットの普及に伴い、英語は世界の共通言語になりました。日本でも小学校から英語教育が始まりましたから、米国への転勤はネイティブの英語力をつける絶好のチャンス。お子さんの年齢に関わらず、ともかく現地で英語を身に付けさせようと、ご両親の期待も膨らむと思います。

 
 せっかく希望に燃えているときに、水を差すことになって気が引けますが、駐在期間こそ、日本語教育をしっかりやってほしいというのが、長年海外で国語指導をしてきた私からのアドバイスです。 

 
 理由は大きく2つあります。

 
1つ目は駐在である以上、日本に帰ることが決まっているのですから、そのときにお子さんができるだけハンディを背負うことなく、スムーズに学習環境に適応できるようにするため。2つ目は、母語がしっかりしないうちに他の言語が混ざったとき、何語かの判断ができないまま使ってしまい、結果として、どちらも中途半端になる恐れがあるからです。年齢が上のお子さんの場合は、小学低学年程度の英単語から覚えなければならず、抽象的な思考や、自我を深めることができなくなる恐れもあります。

 
 二つの言葉を自在に話す「バイリンガル」には、私自身憧れが強く、アメリカで息子を出産したときには、彼らが日本人離れした発音で英語を話す姿を想像しては喜んでいました。ところが、じき、アメリカで生活するだけで、両国語が自由に話せるようになるわけではないことに気づきました。

 

というのも、プレスクール、幼稚園、小学校と親元から離れる時間が延びるにつれて、英語力は伸びても、日本語力が弱くなっているお子さんをたくさん見たからです。小学高学年の男の子が「お買い物」や、「お外」などの幼児語を言ったときにも驚きました。家庭内の日本語はどうしても使う単語が限られますし、お母さんとばかり話していると、男の子でもそれが女言葉だという意識なく使ってしまいます。

 

日本語の単語よりも英語のほうを先に覚えてしまった場合も問題で、それがどちらの言葉か分からずに使ってしまうため、「シーライオン、スリープしてたよ(アシカが寝てたよ)」というように、本人は日本語のつもりで話していても、そうとは思えない表現も増えてきます。

 

いくら英語が上手になっても、正確な日本語が話せないようでは「バイリンガル」とはいえません。海外にいるからこそ、国内にいる以上に年齢相応の語彙(単語)数や、言い回しができるよう心がけることが大切です。親御さんのその意識が子供を「バイリンガル」に育てる一歩になると思います。

 

 

 

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