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Vol. 15: スクールランチ

 我が家の息子たちが小学生の頃、夏休みに日本で体験入学をしてまず喜ぶのが給食でした。献立表を見ると、あじの竜田揚げや和風ハンバーグなど子ども達が喜びそうな名前が並んでいます。野菜の種類も多く、栄養バランスを十分に考えた上、アレルギーまで配慮しているのには感心させられました。

 対するアメリカはというと、とても比べ物にはなりません。チキンナゲッツにカットフルーツの缶詰を開けただけの「フルーツサラダ」、これにパンとミルクがついている程度で、野菜となるとキャベツのコールスロー、生野菜のスティックサラダや、インゲンの塩茹がほとんど。全部食べることを強制されているわけではないので、わずかについている野菜も残す子供が多いのが現状です。

 ただしこのランチは月ぎめで一括払いしてもいいですし、1人3ドルちょっとでその日だけ買うこともできるのが利点です。家では日本食を食べている息子たちは、入学後しばらくして、月ごとに配付されるランチメニューの「ピザ」とメキシコ料理の「タコ」の日には早々に印をつけ、その日学校で買うのを楽しみにするようになりました。

 ピザはともかくメキシコ料理の苦手だった私は、外食のときでもメキシカンレストランに行くことはありませんでしたから、友達の家ででもご馳走になったのでしょう。2人そろって「おいしいよ」と言われるたびに催促されているような気がして、作り方を習い、レストランを教えてもらって出かけるようになりました。じき自分自身が好きになり、いまでは月に1度は食べたいと思うようになったのですから、これはスクールランチのおかげと言えます。

 ランチを買わない子供たちはお弁当を持っていきます。定番のサンドイッチはパンにピーナツバターとジャムをぬっただけの「ピーナツバター・アンド・ジェリー・サンドイッチ」。日本のようにレタスをはさんだものを持ってくる子供は滅多になく、栄養面では合格点にはるかに及びません。けれども日本から来たばかりの子供たちにはランチ時間をクラスメートと楽しむことのほうが大切です。

 だからと言って、スクールランチを買っても口に合わないメニューが続けば、カルチャーショックも大きくなりますし、残せばお腹もすいてしまいます。パンが好きではないからとおにぎりを持って行かせたところ「真っ黒い食べ物を食べてる!」とクラス中から驚きの目で見られ、言葉の壁の他に食べ物の壁もできて、打ち解けるのに時間がかかったという話もよく聞きます。

 周囲の目を全く気にしない豪傑君をのぞき、パン焼き機や、市販されているパンだねを使っておいしいパンを焼き、お子さんが好きになる工夫をしてみてください。昼食時にクラスメートと同じ(ような)ものを食べるだけで、学校生活への適応がより早くスムーズになります。

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