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Vol. 16: 鉛筆の持ち方

 アメリカ育ちの子供かどうか、鉛筆1本を持たせるだけで分かると言ったら「どうして」と不思議に思われるのではないでしょうか。字の上手い下手ではありません。書き順でもありません。鉛筆の持ち方そのものに特徴があるのです。

 ではどんな持ち方をするでしょう。ほとんどが芯のすぐ上を持ち、紙に指先がさわるようにして書き始めます。

 日本では幼稚園の頃からいすの腰掛け方、話を聞く姿勢、鉛筆の持ち方から、紙に書くときの姿勢など生活習慣の指導を受け、義務教育がスタートすると、学校で事あるごとに「正しい〇〇」を教えられます。けれどもアメリカでは、まずどれも授業中に取り上げられることはありません。ノートに書く際も、自分の体に対して45度ほども傾けて、右なり左なりに傾斜をつけて書いている姿をよく見かけますが、先生は何も注意をしません。

 長い書道の歴史があっての現代文字で“道”に示されるように、心構えや姿勢、道具の扱いまで決まりがある日本とは根本的に違うのはしかたがないとしても、いまの子ども達が小学校入学前に文字を書き始めることを考えると、おはしの持ち方同様、親にも責任の一端がないとは言い切れません。

 誰あろう、私自身が息子に鉛筆の正しい持ち方を身につけさせることができず、彼が勉強する姿を苦い気持ちで眺めていましたから、紙とペンで遊び始めたときに気をつけてみてやること、根気良く教えることの2点はアドバイスしたいと思います。

 IT化が進んだいま、子供達は幼児の頃からタッチパネルにさわって、人差し指で操作することを覚えていきます。当たり前のように自分の指先と同じ感覚でペンなり鉛筆なりを持ち始めますから、「正しい持ち方」を教えるのは、以前より根気がいるでしょう。

 アメリカでは教育現場でもコンピューターは必須器具で、小学生でもエッセイやレポートをPCで仕上げ、それを印刷して提出するようになりました。スマホやタブレットが登場してからは、ますます文字を手書きする機会が減り、ロサンゼルス郡やオレンジ郡の一部では、昨年から紙で印刷された教科書やノートを一切使わず、iPadだけの授業を始めています。

 子どもにすれば、一方で良しとされていることを、他方で、それも成績に関係するわけでもない鉛筆の持ち方でガミガミ言われては納得ができないかもしれません。が、日本の公教育の基本は今でも「板書」。つまり授業のノートのとり方にあり、広い意味では姿勢や鉛筆の持ち方までもが含まれます。

 小さなことのようですが、義務教育の年齢で帰る可能性のあるお子さんの場合は、日本の生活習慣を教え、少しでもスムーズに編入できるように鉛筆の持ち方には気をつけてあげてください。

 ただし、しつけに厳しくなるあまり「・・・なさい」の連発にはご注意を。家族でリラックスしているときや、楽しいはずの食事の時間まで、親の小言が続いては逆効果になってしまいます。家族以外誰も親族のいない海外生活。余裕をもってわが子と接するためにも、ご両親の協力は大切です。

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