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Vol. 21: 気持ちがあれば言葉は通じる

   安倍晋三首相がアメリカ議会上下両院合同会議で行った演説を聞いた方はどれくらいおられるでしょう。日本の首相では初めての事だったそうで、TV放映以来、在米日本人・日系人の間ではたいへんな話題になっています。

私は録画をじっくりと見ましたが、背筋を伸ばし、身振り手振りを交えての40分間は堂々として、とても存在感がありました。テレビには分厚い原稿の束も映り、彼がそれを読んでいるのは明らかでも、アイコンタクトをしっかりとし、表情も豊かで、聴衆の議員たちからは何度もスタンディングオーベーションが起きました。

奇しくも、俳優の渡辺謙さんがアメリカ演劇界最高峰のトニー賞で主演男優賞にノミネートされたばかり。彼は映画出演でアカデミー賞の候補になるほどの実力派ながら、厳しいエンターテイメント界でたいへんな快挙です。

政治家と俳優という人前で話すことが職業の人たちとはいえ、いままでアメリカ人を前に表舞台に立ち、自分の顔をはっきりと見せて話す日本人はあまりいませんでしたから、とても誇らしく感じました。

一般的に日本人は人前で話すのが苦手な人が多く、授業中にわかっていても挙手をしない子供はたくさんんいます。けれども国境を超えて人間が移動し、他民族が混ざり合って生活する時代になると「だまっている」ことは美徳にはならず、反対に誤解を招いたり、存在を無視されることも起きてきます。韓国や台湾、中国からの移民が多いオレンジ郡では、日本人かどうかの見分けがつかないために、外からは、「アジア人」としてひとくくりにされ、中では主張の強い者に負かされてしまうという話もよく聞きます。

言葉が通じるかどうかは、究極のところ発音や文法ではなく、伝えようとする意志の強さにかかっています。安部首相も原稿を持ち、渡辺謙さんはそれを暗記して言っている。それでも聞き手の心にその人の言葉として入ってくるのは、言葉にこめた思いがあるからです。

流暢な英語のほうがよく聞いてもらえることは確かですが、まちがうことに神経質になり口をつぐんでいては、相手に分かってもらえないだけでなく、個々人が持っている伸びる芽も伸びなくなってしまいます。

海外転勤を「意思表示の好機」ととらえてはどうでしょう。英語がわからないのに、意見を言うなど、無茶なことをと思われるかもしれませんが、たとえ言葉が分からなくても、教室でだまりこむのではなく、顔の表情や、体全体を使って自分の気持ちを伝えようとする努力こそが大切です。言葉が少しでも分かるようになったら、「Yes」「No」をはっきりと。もう少し英語ができるようになったら、「like」を相手に伝えてみる。その次は「like」の理由が言えるように──伝えようという気持ちさえあれば、技術は必ずついてきます。

   お子さんを信じて、焦らず、少しだけ背中を押してあげてください。

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