Vol. 25: 論理的思考

今回はちょっと難しそうな題がついていますが、算数・数学を中心にしたお話です。

アメリカの算数・数学教育に関して、以前式を重視しないことは書きました。大学進学の決め手の1つになる統一テストのSATは、5つの答えの中から正解を選び、記号で答えるため、途中の式を問われることはありません。中学や高校の単元テストでも、答えあわせの時間を短縮するマークシート方式を取り入れているところが多く、正解は常に記号で示され、問題からすぐに答えに飛んでしまいます。

1人の先生が100人以上の生徒をもっていることや、毎日のように課す宿題の採点だけで相当な時間を使うなど、それなりの理由はあるのですが、数学が苦手な子供が、式を必要としないやり方に慣れてしまうと、論理だてて物事を考える力そのものにも影響が出てくることがあるので要注意です。

自分がどこでどうつまづいているかを知る手がかりが残されていないのですから、テストが返ってきても復習のしようがありません。なぜ間違えたかという究明をしないままで、授業は先に進み、次のテストに臨むことになります。

日本の算数・数学は答えを導く途中経過に重点がおかれ、式のない答えは、たとえ正解でも点数をつけない先生が大勢います。この指導の徹底により、自分の考え方を順序立てて示すことの大切さを学び、不正解や途中でつまづいて解答が出せないとき、間違えを自ら発見することができるのです。

この式を1つずつ書いていくという作業が、意識するしないに関わらず、論理的な思考につながっています。

国語の意見文や小論文を書く単元で、何をどんな順番で書くと説得力が増すかを考えるとき、論理的思考は不可欠です。文章の飛躍は頭の中にある「考え=式」を書き落としたことでおきます。複雑な内容になればなるほど、相手に正しく伝えるためには話を飛ばすことなく、丁寧に説明しなければなりません。そしてそれが成されたとき、文章は説得力のある確固たる力を持つのです。

携帯電話がインターネットに接続し、いつでもどこでも瞬時に答えが得られる時代になりました。辞書も教科書も計算機もポケットの中の携帯電話に入っているのですから、こんな便利なことはありません。何でも苦も無く調べられます。ただそうは言っても、人間の脳がITと同じように進化しているわけではありませんから、問題解決に大切な、物事を論理的に考える力を養うには訓練が必要です。小さなことのようですが、アメリカ方式のデジタルではなく、日本式のマニュアル算数・数学で、その力を養ってほしいと思います。

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