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急須と中国茶
香港に引っ越してしばらくたち、日常の買い物にも少しずつ慣れてきたころです。市電が走り、お店の立ち並ぶ通りを歩いていたら、道端に台を出して急須を売っている人がいました。濃い茶色で一つとして同じ形はないような手作り感のある姿が気に入って、見かける度に買っていくつも集めました。香港といえば広東料理がとにかく美味しくて、一緒に飲むお茶もいろいろありますが、何といっても普洱(プーアール)茶が決まりものでした。
何年かしてシンガポールに引っ越してまた一から新生活をスタート。台湾人の先生に中国茶道を習い始めました。お茶の歴史や種類、入れ方などを教わりました。新鮮に思い出されるのが、好きなお茶を選び、テーマを決めてみんなの前でお点前を披露しあうというのがレッスンの一環にあること。日本のお茶のお稽古ですと、先生のお手本通りにお茶を入れますが、中国茶道ではもっと自由に、自分らしく、がテーマでした。仕事帰りの地元の人に交じって、夜の区民館のようなところに集まり、ちょっと緊張しながらお茶を披露するというのは珍しい、面白い体験でした。また別の時には、好みのお茶をポットに作って広場に集まり、両隣りの人と交換するという会があって、子供達と参加しました。知らない地元の人たちとお茶を飲みっこするという、気楽な楽しい会でした。
帰国したら、いつの間にか日本でもウーロン茶などを普通にペットボトルで飲むようになっていましたし、ティーバッグも売られています。でも私の中で中国茶といえば、香港の道端で見つけた紫泥急須から始まり、美味しい広東料理に欠かせない普洱茶、そしてシンガポールで教わった自由に気楽に楽しむ茶道へとつながっています。慌ただしい毎日を過ごす中ですっかり忘れていましたが、あらためてゆっくりと美味しい中国茶を入れてみたいと思いました。
相談員H






