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韓国とかかわって45年

 私には、心から尊敬する二人の韓国人女性がいます。チョ・イルスン(趙一順)先生とチョン・ジョンワン(鄭貞婉)先生です。チョ先生からはメドゥプ (韓国の伝統結び)を、また、ハンボク (韓服)の仕立て匠、韓国重要無形文化財技能保持者のチョン先生からは伝統的なポジャギ(袱紗)、チョガッポ(パッチワーク)を教えて頂く幸運に恵まれました。
 45年前の当時は、現在の日韓関係とは違い、両国間に新たな関係を築きあげようとする機運があり、ギスギスとした感情的わだかまりはかなり押さえられていたように思います。ただ、庶民の中には激しい感情をむき出しにする人もいることはいました。ただ、お二人は伝統的な韓国の教養文化の中でお暮らしになったからかもしれませんが、慈しみと優しさと明るさ、そして情に厚い人柄でした。私はそんなお二人の人柄に接し、伝統的な技法や手法を学ぶだけでなく、韓国の女性たちの生き方、心の持ちように思いをはせ、心を磨くことができたことをこの上なく有り難く思っています。お二人はすでに故人となられましたが、80歳代、90歳代になるまで現役で活動されたそのお姿は私の心の中に残っています。
​ 私自身、研究と制作活動を続けて、メドゥプは43年、ポジャギは32年になります。その間に、日本国内で日本人だけでなく韓国人にも手解きをし、展示会などで韓国の伝統文化を紹介し続けています。こうした活動を通じて、私はいろいろな世代の方々と知り合うことができました。ただ、古希を過ぎ、体力面などで戸惑うことも多くなりましたが、お二人のお姿を思い浮かべ、心を奮い立たせています。何といっても私がポジャギを習った時、チョン先生は80歳でいらっしゃったのですから。
 また、私の周りでは、韓国刺繍、料理、民画、ハンジ(韓国紙)工芸などに関心を持ち、皆さんそれぞれ韓国に習いに行ったり、パソコンを駆使したりして、積極的に取り組んでいます。
 私はメドゥプとポジャギを楽しみながら続けてきたお陰で、今年もいろいろな出会いがありそうな予感がしています。
 これから、在外生活をなさる方々、また今なさっている方々に申し上げたいのは、この良いご縁とチャンスを逃さず、それぞれの駐在国の歴史、社会、文化、住む人々への理解を深め、その後の人生を豊かにする糧となさるようお勧めします。

相談員S

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