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Vol. 18: ファンドレイズ

 慢性的な財政難のカリフォルニア州では、新年を迎えるたびに予算カットが話題になります。日本で義務教育の予算削減などといったら大騒ぎにになりそうですが、残念ながらここでは例外として認められず、小中学校にも大きな影響が出ます。

 図書や実験道具の補充、コンピューターの入れ替えなど、直接わが子に降りかかる災難に対して、どうやって学校をよくしていくのか----州政府に訴えるための署名運動に参加したこともありましたが、いかにもアメリカ的だと思うのが、ファンドレイジング(資金集め)です。

 PTAのバザーと違い、ファンドレイジングには必ず子ども本人が参加し、小学校ではマラソン(ジョギング)大会とタイアップしたものがよく行われます。競技として記録のために走るだけでなく、その「走り」に応じて寄付を募るのです。

 決められたコースを1周するごとに1ドルなら1ドル寄付する旨の契約を結び、当日もし10周すれば10ドル、20周すれば20ドルをその子どもに支払います。参加者は自分のがんばりがそのまま資金集めに反映し、まさに身をもって学校に貢献することができます。

 寄付額は自由で、1周10セントでもかまいません。走ることが苦手な子どもには、走りに関係なく「参加」に対して30ドルなら30ドルを寄付するという項目も選べるようになっていて、アメリカ人家庭では祖父母や親戚にも呼びかけ、高額寄付を集める子どもいるようです。

 こうした寄付集めに対して、慣れないうちは、声をかける先もなく「一家族いくらって決めてくれたほうがいいのに」「設備費で徴収すればいいのに」と愚痴もでました。けれども回を重ねるごとに、全くの任意で、寄付ができる家はより多く、無理な場合はいくらでもという自由さに大人の対応を感じるようになりました。

 子どものほうは、大会前になぜ走るのか、なぜお金を集めるのかという事情をきちんと説明されているので、一生懸命参加しますし、終った後には個人記録だけでなく、学校から寄付総額の報告も受け「すごいよ!全部で2万ドくらいも集まったんだって。コンピューターいいのがいっぱい買えるって先生喜んでた」とうれしそうで、予算カットがもたらした“けがの功名”に感心もしました。

 この他にも運動部の部員が遠征費や用具補修費のためにチョコレートやカレンダー、クリスマスツリーを売ることもありますし、ガールスカウトがユニフォームを着て、スーパーの前でクッキーを売る姿は風物詩にもなっています。

 お金のことはなるべく子どもに知らせないのではなく、現状を伝え、目的意識を持って資金を集めさせるという大人扱いには、日本との違いを感じ、同時に学ぶことも多くありました。

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